主催 教育史学会
報告1 教育における競争―日本近代を対象として
斉藤利彦(学習院大学,日本教育史)
報告2 競争のインフラストラクチャ―を問う
苅谷剛彦(東京大学・オクスフォード大学,教育社会学)
報告3 競争と教育の公共性
小玉重夫(東京大学,教育思想史)
コメント 八鍬友広(新潟大学,近世教育史) 牧野篤(東京大学,アジア教育史)
日 時:2009年7月11日(土)1時〜5時
場 所:東北大学東京分室会議場
(サピアタワー10階, 東京都 千代田区丸の内1丁目, 東京駅日本橋口すぐ, 3階セキユリティゲートで受付後入館)
近代公教育において,競争は重要なイシューとなってきました。身分や門地によって職業選択・教育機会が固定化されている社会では,競争は起こりません。競争は社会的平等と富の平準化がもたらすものでもあり,戦前日本においては,複線型学校制度と階層格差・性差別によって参加できる層は限られ,仕切られた市場のもとでの競争が繰り広げられてきたともいえます。
第2次世界大戦後の教育改革は,中等教育の開放を実現し,進学機会が拡大しましたが,競争も広がりました。戦後教育史は,競争の弊害を抑制しながらその基盤を拡大する歴史でもありました。一方,80年代から世界的に広がったいわゆる新自由主義改革によって,政府規制の緩和と公的部門の縮小が進み,教育と競争の関係も新たな様相を呈しています。
旧来,日本を含めたアジア諸国は公教育に政府が大きな役割を果たし,競争の促進・平等性は政府のイニシャチブのもとで維持されてきました。外見的には,政府の役割が後退し,自律と競争による質の向上がうたわれ,評価制度や資源配分を通じて,学校・教師間のあらたな競争が,個性化や多様化といったタームと対になって登場しているのです。このような状況をふまえ,一国史に止まらず比較歴史的視点に立って,教育における競争の意味を問い直すことを意図し,シンポジウムを企画しました。
斉藤報告は,教育史研究における教育と競争の研究動向をふまえ,生徒間に組織される競争に焦点を置き,特に近代日本の競争の特質を、戦前と戦後の比較もふまえ明らかにします。
苅谷報告は,教育資源の配分形態が,個人間の競争として現れるアメリカと,学校など組織間の競争として現れる日本との差異を生み出すと捉え,1950年代に確立する日本の教育財政制度の分析を行います。
小玉報告は,新自由主義改革の特徴ともいえる「評価国家」化の現われとして,教員評価や学力テストなどのパフォーマンス評価がもたらす競争の意味を,日米比較を通じて明らかにします。
近現代・同時代史を貫くこの問題を広く検討するために,関心のある方はぜひご参加下さい。
参加ご希望の方は,名簿など準備の都合がありますので7月7日(火)までに,担当理事(東北大学・羽田貴史)までご連絡ください。
ポスターはこちらです。
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