2016代表理事メッセージ

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代表理事メッセージ

教育史学会は2016年5月3日に創立60周年を迎えました。1956年の同じ日、東京学芸大学に約70人が集まって創立大会が開催されて会則が制定され、また6月19日の第1回理事会で理事の互選により石川謙氏が代表理事に選出されました。同年8月に発行された第1号の『会報』の冒頭に掲載された石川謙代表理事の「挨拶」の冒頭には次のように書かれています。

 ながい胎動期と準備期とを順調にのり切って、わが教育史学会が新しく誕生した。教育史研究は、教育に対する科学的研究の、あらゆる分野の、どこにも付いてまわる筈の基礎研究の一面である。また、時勢の流れというもの、政策に基ずいたり基ずかなかったりする政治の動きというもの、どちらも結局は「力」であるが、その力がしばしば「理性」の姿を装って、教育を支配し、教育に干する考え方を支配する。教育史をまともに研究することは、眼つぶしを喰わされがちな「理性」の、失地回復の役目をつとめるものである。

1950年代半ば頃からの教育をめぐる激しい左右対立が最高潮に達した状況にあって、教育史研究を「基礎研究」と自ら定義し、科学や理性を下支えするという学術的社会的な役割を静かな言葉でアピールしています。

人間で言えば還暦を迎えた現在、教育をめぐる政治的社会的な状況は、当時とはかなり違っていますが、上記の石川謙代表理事の「基礎研究」という言葉がもつ意義とその役割は変わっていないように思います。むしろ、学術政策全般にわたって基礎研究が軽視されつつあるなかで、教育史研究が基礎研究としての成果をより明瞭に発揮することによって、すぐに有効な結果が出るかどうかでの「評価」が支配している現状を少しでも変えていきたいと考えています。

一方で、発足時からの「日東西」の枠組みやその範囲が大きく広がらず、あるいは近世以前の研究の担い手が減り、しかも戦後70年を過ぎても戦後教育史研究を担う会員があまり増えないなど、本学会自身がさまざまな課題を抱えています。教育史研究が、教育学の、あるいは人文社会研究全体の基礎学として期待される役割を果たすためにも、自身が抱えている課題を少しずつでも克服してゆかなければならないと考えています。

教育史学会は、厳密な実証と時代状況の全体的な把握をふまえての対象の歴史的位置づけという基本姿勢を共有しつつ、さまざまな時期や国・地域を研究対象とする会員によって構成されています。これから教育についての基礎的な研究をしようとしている方、教育に関する歴史研究を志している方など、多くの方が本学会に参加し、教育史研究の活性化にともにかかわってくださることを願っています。

(代表理事 米田俊彦)

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教育史学会事務局
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