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代表理事メッセージ

代表理事

 大学の自治と学問の自由が危機に瀕しています。国立・公立・私立という設置形態により状況が異なるのはもちろん、大学によっても危機の度合いは異なりますが、すでに危機に瀕しているどころか、自治が崩壊している大学も少なくありません。国立大学の場合、2014年の学校教育法・国立大学法人法の一部改正により教授会の権限が教育研究に関する事項について学長に意見を述べることに限定され、重要事項は学長以下の役員層が決定権を握ることとなりました。大学により時期は異なりますが、この「改革」と並行して学長選考が産業界の有力者など学外者により左右される仕組みがつくられ、政府の推進する産官学連携に忠実な学長が教職員の労働環境や学生の学修環境を大きく損なう「改革」をトップダウンで決めてしまう傾向が顕著になっています。

 憲法学者高柳信一は、学問の自由それ自体は市民的自由の一部であるにもかかわらず、憲法にあえてこれを記したのは、大学のように組織として学問を行うところでこそ学問の自由が侵されやすいからだと説明しました。すなわち、教員研究者は誇り高い職人であると同時に組織の中では設置管理者の被使用人でもあり、金銭の支配力に抗しながら専門職能的自由を擁護するために学問の自由が必要なのだと説きました。また、その制度的保障として「教員人事の自主決定権」「研究教育の内容・方法・対象の自主決定権」「財政自治権」などが不可欠であると論じました(高柳信一『学問の自由』岩波書店、1983年)。

 今日の大学では「財政自治権」が確立されていないのはもとより、「教員人事の自主決定権」「研究教育の内容・方法・対象の自主決定権」も危うくなっています。このような状況にあるからこそ、自律的結社としての学会活動を通じてピア・レビュー(専門家集団内部での相互評価)の原理を尊重しながら大会を開催し、機関誌・会報を刊行し、国内外の学会との研究交流を進めることが今まで以上に重要になっています。科学社会学者吉岡斉は、学会活動の意義を「専門分野の自治」という言葉で表現しました。すなわち、大学が人事権を持つのに対して、学会は専門的な学術雑誌への論文掲載を決定する権利など情報管理権を持つのであり、大学における人事が専門分野での評価を基準として行われるのは「大学の自治」の根底に「専門分野の自治」が働いていることを示すと論じています(吉岡斉『科学文明の暴走過程』海鳴社、1991年)。

 専門分野の自治を守り抜くことは、大学の自治や学問の自由の崩壊をぎりぎりで押しとどめる意味を持ちます。しかも、教育史学という専門分野は、その研究対象のなかに大学・学問の歴史にかかわる省察を含んでもいます。それぞれの大学の労働・修学環境が苛酷になっているために学会活動に時間を割くのが難しいこともあるかとは思いますが、新たに代表理事に選出された者として、教育史学という専門分野の自治をなんとか維持し発展させていきたいと思います。大会で研究発表をして論文を投稿する、編集委員としてこれを審査する、大会参加記を会報に寄せる、機関誌に書評を書く、国際交流のためのイベントに参加するetc.…いずれも重要な学会活動です。会員のみなさまが、教育史学会という自律的結社にかかわる自治の担い手として意欲的に学会活動に参加されることを期待します。
(代表理事 駒込 武)

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